11. pygeonlp の用語

ここでは pygeonlp で利用する用語を定義します。

11.1. 地名語

GeoNLP ドキュメントの 地名語 を参照してください。

pygeonlp では、 拡張辞書をインストール するとその辞書に含まれる地名語が データベースに登録され、地名解析に利用できるようになります。

11.2. 地名解析辞書

GeoNLP ドキュメントの 地名解析辞書 を参照してください。

pygeonlp では、地名解析辞書は CSV 形式のファイルとして扱います。

11.3. データベース

pygeonlp では地名抽出を効率よく行なうため、地名語をデータベースに 登録して管理しています。データベースには以下のファイルが含まれています。

  • geodic.sq3

    地名解析辞書から読み込んだ地名語のリストを格納する SQLite3 データベースファイルです。

  • wordlist.sq3

    地名語のリストから作成した、語の表記と geolod_id の関係を記録した SQLite3 データベースファイルです。

  • geo_name_fullname.drt

    テキスト中の地名語を効率よく抽出するには Common Prefix Search 処理を 高速に行なう必要があります。 pygeonlp では Darts を利用しており、 登録されている全ての地名語表記から作成した Darts 辞書ファイルを geo_name_fullname.drt というファイル名で保存しています。

11.4. データベースディレクトリ

データベース を配置するディレクトリを指します。

データベースを複数用意したい場合、データベース内のファイル名は固定なので、 ディレクトリを変更する必要があります(データベースはディレクトリごと コピーすれば複製できます)。

データベースディレクトリは次の順序で決定されます。

  • API の db_dir パラメータで指定されたディレクトリ

  • 環境変数 GEONLP_DB_DIR がセットされている場合はその値

  • 環境変数 HOME がセットされている場合は $HOME/geonlp/db/

上記のいずれも当てはまらない場合は RuntimeError になります。

Docker や仮想環境で、コードを変更せずにデータベースディレクトリを 変更したい場合には、環境変数 HOME または GEONLP_DB_DIR を セットするのが便利です。

一連の処理の中で、タスクによって利用するデータベースを切り替えたい という場合には、 db_dir パラメータにデータベースディレクトリを指定して init() を呼んでください。

python
>>> import pygeonlp.api as api
>>> api.init(db_dir='/usr/local/share/lib/geonlp/db')
>>> ... (共通データベースを利用したタスク) ...
>>> api.init(db_dir='/home/me/geonlp/testdb')
>>> ... (テスト用データベースを利用したタスク) ...

クラス pygeonlp.api.workflow.Workflow または pygeonlp.api.service.Service のコンストラクタで db_dir を指定することで、使用するデータベースを個別に指定することも できます。

11.5. ラティス表現

ラティス表現は、地名解析処理の途中で利用する内部データ表現です。

テキストを形態素に分解し、それぞれの形態素に対して1個以上の候補 Node オブジェクトが含まれる二重リスト構造になっています。

例: api.analyze("アメリカ大使館:港区赤坂1-10-5") の結果として 得られるラティス表現の構造のイメージ

[
  [ アメリカ大使館 ],
  [ : ],
  [ 港区(市区町村・東京都), 港区(市区町村・名古屋市), 港区(市区町村・大阪市) ],
  [ 赤坂(駅・上毛電気鉄道/上毛線), 赤坂(駅・東京メトロ/千代田線),
    赤坂(駅・富士急行/大月線), 赤坂(駅・福岡市営地下鉄/空港線)],
  [ 1 ],
  [ - ],
  [ 10 ],
  [ - ],
  [ 5 ]
]

解析結果は 9 個の形態素からなり、3 番目の「港区」の形態素には 3 個の候補 Node が、4 番目の「赤坂」の形態素には 4 個の候補 Node があります。

簡易表示

ラティス表現は pp_lattice() を利用して 簡易表示することができます。

>>> import pygeonlp.api as api
>>> from pygeonlp.api.devtool import pp_lattice
>>> lattice = api.analyze('アメリカ大使館:港区赤坂1-10-5')
>>> pp_lattice(lattice)
#0:'アメリカ大使館'
  アメリカ大使館(NORMAL)
#1:':'
  :(NORMAL)
#2:'港区'
  港区(GEOWORD:['東京都'])
  港区(GEOWORD:['愛知県', '名古屋市'])
  港区(GEOWORD:['大阪府', '大阪市'])
#3:'赤坂'
  赤坂(GEOWORD:['上毛電気鉄道', '上毛線'])
  赤坂(GEOWORD:['東京地下鉄', '9号線千代田線'])
  赤坂(GEOWORD:['富士急行', '大月線'])
  赤坂(GEOWORD:['福岡市', '1号線(空港線)'])
#4:'1'
  1(NORMAL)
#5:'-'
  -(NORMAL)
#6:'10'
  10(NORMAL)
#7:'-'
  -(NORMAL)
#8:'5'
  5(NORMAL)
住所を含む場合

住所解析を行なうと、住所候補を構成する形態素に含まれる 「住所以外の候補」は削除され、住所ノードに統合されます。

例: api.analyze("アメリカ大使館:港区赤坂1-10-5", jageocoder=True)

#0:'アメリカ大使館'
  アメリカ大使館(NORMAL)
#1:':'
  :(NORMAL)
#2:'港区赤坂1-10-'
  港区赤坂1-10-(ADDRESS:東京都/港区/赤坂/一丁目/10番)[6]
#3:'5'
  5(NORMAL)

住所以外の候補も残したい場合は keep_nodes=True を指定します。 この場合、住所に該当する先頭の形態素に住所ノードが追加されます。

例: api.analyze("アメリカ大使館:港区赤坂1-10-5", jageocoder=True, keep_nodes=True)

#0:'アメリカ大使館'
  アメリカ大使館(NORMAL)
#1:':'
  :(NORMAL)
#2:'港区'
  港区(GEOWORD:['東京都'])
  港区(GEOWORD:['愛知県', '名古屋市'])
  港区(GEOWORD:['大阪府', '大阪市'])
  港区赤坂1-10-(ADDRESS:東京都/港区/赤坂/一丁目/10番)[6]
#3:'赤坂'
  赤坂(GEOWORD:['上毛電気鉄道', '上毛線'])
  赤坂(GEOWORD:['東京地下鉄', '9号線千代田線'])
  赤坂(GEOWORD:['富士急行', '大月線'])
  赤坂(GEOWORD:['福岡市', '1号線(空港線)'])
#4:'1'
  1(NORMAL)
#5:'-'
  -(NORMAL)
#6:'10'
  10(NORMAL)
#7:'-'
  -(NORMAL)
#8:'5'
  5(NORMAL)

11.6. パス表現

パス表現は、一連の地名解析処理のうち、最後のスコアリングと 結果の出力の際に利用する内部データ表現です。

テキストを形態素に分解し、それぞれの形態素に対する候補から 1つずつ選択した Node オブジェクトのリスト構造になっています。

LinkedResults ジェネレータクラスを利用すると、ラティス表現からパス表現の候補を 一つずつ生成して取得することができます。

例: next(LinkedResults(api.analyze('アメリカ大使館:港区赤坂1-10-5'))) の結果として得られるパス表現の構造のイメージ

[
  アメリカ大使館,
  :,
  港区(市区町村・東京都),
  赤坂(駅・上毛電気鉄道/上毛線),
  1,
  -,
  10,
  -,
  5
]

このセンテンスを解析すると「港区」の候補が 3 個、「赤坂」の候補が 4 個存在するため、 3 × 4 = 12 個のパス表現が得られます。

簡易表示

パス表現は pp_path() を利用して 簡易表示することができます。以降の例ではこの簡易表示を利用します。

>>> import pygeonlp.api as api
>>> from pygeonlp.api.linker import LinkedResults
>>> from pygeonlp.api.devtool import pp_path
>>> api.init()
>>> lattice = api.analyze('アメリカ大使館:港区赤坂1-10-5')
>>> pp_path(next(LinkedResults(lattice)))
[
  #0:アメリカ大使館(NORMAL)
  #1::(NORMAL)
  #2:港区(GEOWORD:['東京都'])
  #3:赤坂(GEOWORD:['上毛電気鉄道', '上毛線'])
  #4:1(NORMAL)
  #5:-(NORMAL)
  #6:10(NORMAL)
  #7:-(NORMAL)
  #8:5(NORMAL)
]
住所を含む場合

住所ノードを含むラティス表現からパス表現を生成する場合、 住所ノードが複数の形態素にまたがるため、次のノードを正しく 選択する必要があります。

LinkedResults はこの処理を自動的に行ないます。

>>> import pygeonlp.api as api
>>> from pygeonlp.api.linker import LinkedResults
>>> from pygeonlp.api.devtool import pp_lattice, pp_path
>>> lattice = api.analyze('アメリカ大使館:港区赤坂1-10-5', jageocoder=True, keep_nodes=True)
>>> for path in LinkedResults(lattice):
...   pp_path(path)
...
[
  #0:アメリカ大使館(NORMAL)
  #1::(NORMAL)
  #2:港区(GEOWORD:['東京都'])
  #3:赤坂(GEOWORD:['上毛電気鉄道', '上毛線'])
  #4:1(NORMAL)
  #5:-(NORMAL)
  #6:10(NORMAL)
  #7:-(NORMAL)
  #8:5(NORMAL)
]
[
  #0:アメリカ大使館(NORMAL)
  #1::(NORMAL)
  #2:港区(GEOWORD:['東京都'])
  #3:赤坂(GEOWORD:['東京地下鉄', '9号線千代田線'])
  #4:1(NORMAL)
  #5:-(NORMAL)
  #6:10(NORMAL)
  #7:-(NORMAL)
  #8:5(NORMAL)
]
[
  #0:アメリカ大使館(NORMAL)
  #1::(NORMAL)
  #2:港区(GEOWORD:['東京都'])
  #3:赤坂(GEOWORD:['富士急行', '大月線'])
  #4:1(NORMAL)
  #5:-(NORMAL)
  #6:10(NORMAL)
  #7:-(NORMAL)
  #8:5(NORMAL)
]
[
  #0:アメリカ大使館(NORMAL)
  #1::(NORMAL)
  #2:港区(GEOWORD:['東京都'])
  #3:赤坂(GEOWORD:['福岡市', '1号線(空港線)'])
  #4:1(NORMAL)
  #5:-(NORMAL)
  #6:10(NORMAL)
  #7:-(NORMAL)
  #8:5(NORMAL)
]
[
  #0:アメリカ大使館(NORMAL)
  #1::(NORMAL)
  #2:港区(GEOWORD:['愛知県', '名古屋市'])
  #3:赤坂(GEOWORD:['上毛電気鉄道', '上毛線'])
  #4:1(NORMAL)
  #5:-(NORMAL)
  #6:10(NORMAL)
  #7:-(NORMAL)
  #8:5(NORMAL)
]
[
  #0:アメリカ大使館(NORMAL)
  #1::(NORMAL)
  #2:港区(GEOWORD:['愛知県', '名古屋市'])
  #3:赤坂(GEOWORD:['東京地下鉄', '9号線千代田線'])
  #4:1(NORMAL)
  #5:-(NORMAL)
  #6:10(NORMAL)
  #7:-(NORMAL)
  #8:5(NORMAL)
]
[
  #0:アメリカ大使館(NORMAL)
  #1::(NORMAL)
  #2:港区(GEOWORD:['愛知県', '名古屋市'])
  #3:赤坂(GEOWORD:['富士急行', '大月線'])
  #4:1(NORMAL)
  #5:-(NORMAL)
  #6:10(NORMAL)
  #7:-(NORMAL)
  #8:5(NORMAL)
]
[
  #0:アメリカ大使館(NORMAL)
  #1::(NORMAL)
  #2:港区(GEOWORD:['愛知県', '名古屋市'])
  #3:赤坂(GEOWORD:['福岡市', '1号線(空港線)'])
  #4:1(NORMAL)
  #5:-(NORMAL)
  #6:10(NORMAL)
  #7:-(NORMAL)
  #8:5(NORMAL)
]
[
  #0:アメリカ大使館(NORMAL)
  #1::(NORMAL)
  #2:港区(GEOWORD:['大阪府', '大阪市'])
  #3:赤坂(GEOWORD:['上毛電気鉄道', '上毛線'])
  #4:1(NORMAL)
  #5:-(NORMAL)
  #6:10(NORMAL)
  #7:-(NORMAL)
  #8:5(NORMAL)
]
[
  #0:アメリカ大使館(NORMAL)
  #1::(NORMAL)
  #2:港区(GEOWORD:['大阪府', '大阪市'])
  #3:赤坂(GEOWORD:['東京地下鉄', '9号線千代田線'])
  #4:1(NORMAL)
  #5:-(NORMAL)
  #6:10(NORMAL)
  #7:-(NORMAL)
  #8:5(NORMAL)
]
[
  #0:アメリカ大使館(NORMAL)
  #1::(NORMAL)
  #2:港区(GEOWORD:['大阪府', '大阪市'])
  #3:赤坂(GEOWORD:['富士急行', '大月線'])
  #4:1(NORMAL)
  #5:-(NORMAL)
  #6:10(NORMAL)
  #7:-(NORMAL)
  #8:5(NORMAL)
]
[
  #0:アメリカ大使館(NORMAL)
  #1::(NORMAL)
  #2:港区(GEOWORD:['大阪府', '大阪市'])
  #3:赤坂(GEOWORD:['福岡市', '1号線(空港線)'])
  #4:1(NORMAL)
  #5:-(NORMAL)
  #6:10(NORMAL)
  #7:-(NORMAL)
  #8:5(NORMAL)
]
[
  #0:アメリカ大使館(NORMAL)
  #1::(NORMAL)
  #2:港区赤坂1-10-(ADDRESS:東京都/港区/赤坂/一丁目/10番)[6]
  #3:5(NORMAL)
]

pygeonlp の地名解決処理では、パス表現ごとのスコアを path_score() で計算し、降順にソートして結果を返します。

パス表現のスコア計算方法をカスタマイズしたい場合は スコアリング方法のカスタマイズ を参照してください。